COLUMN コラム「真夜中のサーリング先生」

第2回「I Have a Dream」

「ミステリー・ゾーン The Twilight Zone」(以下「TTZ」と略します)がアメリカ本国でオンエアされていたのは、1959年から1964年の間。アイゼンハワーからJFKの時代、つまり「冷戦」の真っ只中。ベトナム戦争が延々と続き、U2が撃墜され、1962年にはそのピークとも言える「キューバ危機」が勃発しています。
そしてマーティン・ルーサー・キングが「I Have a Dream」と叫んだ、ワシントン大行進が1963年。「公民権運動」が最大の盛り上がりを見せていた時代でもあります。

映像は、作り手と受け止める側のダイナミックな関係抜きには考えられません。

アメリカと世界を取り巻く世界情勢が沸騰していた当時、TTZは、のんびりとファンタジー世界に逃避したり、超常的な出来事に“逃げた”表現で人気を博した訳では決してありません。
ましてや、エミー賞を3年連続で受賞し、社会性の強いテーマを娯楽作品として提供する力に秀でたサーリングが、本気になって作り上げたシリーズです。

数ある傑作群の中でも
「廃墟 Time Enough At Last 」第1シーズン_ep8
「疑惑 The Monsters are Due on Maple Street」第1シーズン_ep22
「遠来の客 The Invaders」第2シーズン_ep15
などなど、当時の状況を色濃く反映した、結末がわかっていても、何度見返しても、シビれる作品たち。

サーリングは後にこういった意味の事を言っています。
(TTZが)SFやファンタジーを取り上げたのは、当時の厳しい検閲に立ち向かうためであった、と。

TTZも、もちろんサーリング一人で作り上げたのではありません。
リチャード・マシスンやチャールズ・ボーモントといった気鋭の脚本家たち、腕利きのクルーや、原作者、若き日のロバート・レッドフォードなどの魅力的な役者たち、SFの詩人レイ・ブラッドベリも1本、原作・脚本で参加しています。(「ロボットの歌 I Sing the Body Electric」第3シーズン_ep35)

オンエア当時からあった「ネタのパクリ」「ネタのかぶり」騒動や、サーリング本人に対する毀誉褒貶も含め、とても人間くさいTTZの世界の中に、O!!iDOが前に進んで行く知恵や戒め、そして指標があるのではないか、今、そう考えています。

先日NHKでオンエアされた「新・映像の世紀」最終回で、9.11アメリカ同時多発テロから始まった21世紀を映像で俯瞰して、作り手たちは現代をこう定義しています。
「誰もが撮影者になり、誰もが発信者になる時代」

O!!iDO短編映画祭はそんな時代に生きています。

プロもアマも、同じ土俵で作り上げた作品だけで、目の肥えたオーディエンスの皆様に立ち向かう舞台。
映像が単なる「動画」から「映画」へとメタモルフォーゼする場所としてO!!iDOは機能していきたい。I Have a Dream.
(つづく)

O!!iDO短編映画祭 キュレーター 丸山大悟




マーティン・ルーサー・キング:
1929年アトランタに生まれ、1968年メンフィスにて凶弾に倒れる。マハトマ・ガンジーの非暴力主義に深く影響され、実際の行動を積み重ねた人物。「I Have a Dream」は実はアドリブであった、スピーチの名手でもあります。

エミー賞:
賞が大好き、アメリカのテレビ芸術科学アカデミー The Academy of Television Arts & Sciencesが主催する、テレビ界のアカデミー賞(陳腐な例え)ロッド・サーリングは1956〜58の3年連続受賞を含め、8回ノミネートされ計5回受賞している。(含むTTZ)参照:http://www.emmys.com/bios/rod-serling

リチャード・マシスン:
TTZにあっては「遠来の客 The Invaders」や「二万フィートの戦慄 Nightmare at 20,000 Feet」第5シーズン_ep3といった傑作をモノにした重要人物。アメリカがTTZ魂を未だ失っていないのは、彼の「四角い墓場 Steel」第5シーズン_ep2を2011年「リアル・スティール 」として再映像化したことでまた証明された。2013年没。彼についてはまた稿をあらためます。

チャールズ・ボーモント:
「奇妙な味」で知られる早逝の逸材(1967年没)。彼についてもあらためて書きます。レイ・ブラッドベリに見出され、TTZへ参加することでサーリングともつながり、そしてかのロジャー・コーマンともつながる、まさに数奇な記憶を残した人です。

ロバート・レッドフォード:
アメリカンなイイ男ですが、O!!iDO的には「サンダンス映画祭」をつくったとっても偉い人。

レイ・ブラッドベリ:
意外に彼の名前が知られておらず、私ある意味焦っています。SFこそ短編と親和性が高いのに。サーリングとの因縁も、名作「ロボットの歌」を生み出したことでチャラになったと思いたい。またこのコラムに登場します。必ず。

第1回「真夜中の招待状´87」

1987年、今となってみれば、時はバブル真っ盛りの頃。
「ニューメディア時代」なんて言われ方で、映像の受け皿が一気に広がった時代—–

ケーブルや衛星波に対抗してか、地上波は「24時間放送」を標榜して、(まだ見る人がついていけた真夜中の時間帯で)深夜枠の編成に本腰を入れ始めます。

(こと映像に関して、この国の業界は受け皿を作ることは大好きですが、実際に作られるものについては、常に後回しになってしまいますね)

某東京の放送局TBSの深夜枠は、過去の名作の再放送。
わざと部屋の明かりを消して、まるで真夜中の秘め事のように画面に見入ったものです。
「ウルトラ」シリーズなども、筆者はここで再発見したのですが、ある夜、「魅惑のアメリカTVシリーズ」と題されたプログラムに出会います。

SONY Betamax F-11から直接音声信号を入力されたミニコンポのスピーカーから聞こえてきたのは、マンハッタン・トランスファーのあのヒット曲のイントロ。

そしてSONY トリニトロンカラーモニターPROFEEL20型に映し出されたモノクロ画面の真ん中に、その人は立っていました。

スーツ姿でキメた精悍な顔立ちのThis is アメリカ人、時に片手をポケットに突っ込み、リラックスした雰囲気で、不思議な物語たちのホスト役を務めるその人こそロッド・サーリング Rodman Edward Serling傑作アンソロジー「ミステリー・ゾーン The Twilight Zone」のクリエイターであります。

サーリングその人についてや、後世の作り手たち(筆者含む)に与えた絶大な影響、そして毀誉褒貶などは、おいおいと語られていくとして。

「ミステリー・ゾーン The Twilight Zone」(以下「TTZ」と略します)は30分番組、つまり本編尺25分程度のフォーマットで製作されました。
(第4シーズンのみ例外的に1時間枠。最終第5シーズンで元の30分枠に戻った)

時間の制約のなかで、何を描き、どう表現していくか…緻密な構成と、あっと驚くどんでん返し。
短編の作法を網羅したような、モノクロ映像の中に、大いなる示唆と知恵が刻み込まれていると、その時直感したものです。

なーんて言っても、堅苦しい理屈をブつつもりは毛頭ありません。

真夜中に出会ったTTZで、最も印象に残っているシーン、それは時空を漂流することになってしまった主人公たちが旅客機33号のコクピットから目撃する光景——
はるか昔のマンハッタン島を闊歩するブロントザウルスの姿だったりするのですから。
(つづく)

O!!iDO短編映画祭 キュレーター 丸山大悟




ニューメディア:
NTT当時の電電公社その他が仕掛け、80年代大流行りで使われ始めた文字通りの「新しい媒体」たち。死に絶えたもの多数、生き残っているのはケーブル局、衛星局、文字放送、ファックスなど。結果的に現在のITシステムに吸収されてしまったものも多い。レーザーディスクプレーヤー、持ってました。

SONY Betamax F-11:
もっさりした外観が特徴的だった家庭用VTRに、変革をもたらした名機。キャッチコピーは「8cmビデオ」(8mmビデオぢゃありません)つまり全高が8cmしかない。発売された時は、そりゃあ驚いたものです。大枚叩いて買いました。オプションのPCMデジタルプロセッサーまでは、さすがに手に入りませんでしたが。It´s a SONY。

トリニトロンカラーモニターPROFEEL20型:
1980年発売。我が愛機Betamax F-11の頼もしい相棒。グッドデザイン賞受賞のカッコイイやつでした。しかも頑丈。CRT LOVEです。

マンハッタン・トランスファー:
知る人ぞ知るアメリカのジャズ・ボーカル・グループ。ウェザー・リポートの名曲「バード・ランド」のカバーや、「ボーイ・フロム・ニューヨーク・シティ」など名曲多数。文中の「あのヒット曲」とは1979年「トワイライト・ゾーン」のこと。TTZのテーマ曲がイントロで使われている。筆者は彼ら彼女らのライブ映像をレーザーディスクで持っていて、繰り返し繰り返し見たのです。

マンハッタン島を闊歩するブロントザウルス:
「33号機の漂流 The Odyssey of Flight 33」第2シーズン_ep18 CMチャンス前のラストカット。真っ暗な部屋の中で「おお!」と声を上げた記憶があります。あたりまえですが、映像作品はビジュアルが命。
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